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2006年 7月31日

“帰農”の新しい形 - 【逸品やまなし】芦沢文彦様

農業とはダメな産業なのか

【逸品やまなし】芦沢文彦様

 今回ご紹介するのは、日本有数の果物の産地として知られている山梨県から、高品質の果物を販売し、また “果物狩り” の集客窓口としての営業も行っている 【逸品やまなし】 のWebマスター芦沢文彦様だ。高級な果物専門店の店頭に並ぶような産地直送の果物を販売し、なおかつその生産者の果樹園で果物狩りが楽しめるというサービスは珍しいだろう。その美味しさを伝えるためにサイトはブログで構築するなど、見せ方にもこだわりを持っている。

【逸品やまなし】トップページ

 同氏は以前、東京都内や群馬県で不動産関連の企業に勤めていた。「大規模店舗用地の取得を手がけていたのですが、そういった用地の多くは農地でした。自ずと農家を訪ねることが多く、先々で 『もう農業はダメだから別の方法で有効活用をしたい』 という話を聞きました。」 若者はみなサラリーマンとなってしまい、農家の跡を継ごうとする者も少ない。きつい労働の割には収入が少ないため、農業では生計が成り立っていかなくなっていることが分かっているだけに、自分の代で農業を止めてしまうところも多かった。

 このような農家の現状を見て淋しさを感じていたのだが、「ふと自分のことを思うと、自分も実家の山梨の果樹農家を継がず、サラリーマンをしていたものですから、全く同じ状況にあることに改めて気づきました。」 そんな生活の中で色々と考えているうちに、「徐々に 『農業って本当にダメな産業なの?』 という疑問が膨らんできました。『やり方、考え方で農業はもっと面白い職業になるのではないか?』 サラリーマン生活も一区切りつき、“かっこいい農業” をしたいという希望を胸に、妻子とのUターンを決意しました。」 同氏は勇気を持って“帰農”という道を選んだのだ。

 それから3年間、真剣に実家の農作業を行う日々が続いた。そのかたわら、実家で作った果物のネット販売や果物狩りの集客を行うサイトを開設し、一定の成果を収めることができた。「しかし、農作業を終えてからのネット管理は体力的にきつかったため、両立は断念しました。自分の一番大きな目標が、“果物王国山梨の最高品質の果物を提供すること” となったため、サイト運営に専念することにしました。」 2003年4月には、現在のサイトを立ち上げ、その運営は徐々に軌道に乗り始める。毎日の労働として農作業をしなくなったものの、意欲ある農家の方々と接する新しいタイプの帰農者となったのだ。

協力メンバーを探すことが難しい

生産者の方の顔が見える作りとなっている

 しかし、サイトの立ち上げ当初から順調に事が運んだ訳ではない。「農業に対してしっかりしたビジョンを持ち、最高品質の果物を作っていて、なおかつネット販売に協力していただけるメンバーを探すことが一番大変でした。」 サービスの根幹となる部分だけに、適当にお茶を濁して近所の農家の方に依頼する訳にはいかない。まだ販売実績に乏しい段階では、周囲からの理解を簡単には得られるものではないだろう。

 この姿勢は今でも変わっておらず、「“顔のわかる生産者がお届けする最高品質の果物” というコンセプトがありますので、妥協はできません。今も取り扱いを始めたい果物があるのですが、こちらのハードルが高いため、安易にメンバーを増やすことが出来ず、収入の伸び悩みの原因となっています。」 取り扱い品目を増やせばそれだけ売上げが増すことは間違いないが、安易にその方法に飛びついてしまえば、全ての信頼関係が崩れてしまうことになりかねないのだ。

 同店に協力している農家の方は、そのほとんどが 「エコファーマー」 の認定を受けている。この制度は、1999年に制定された 「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」 によるもので、環境と調和のとれた農法を取り入れている農家が認定されている。いかにも今日的だと言えるが、「やる気のある農家さんでは、“エコファーマーは取得していて当たり前” という感じではないでしょうか? 逸品やまなしの生産者は、この制度が始まる前から、当たり前にエコファーマーに準拠した栽培をしてきています。」 真剣に美味しい果物作りに取り組んでいると、やはりこうした農法へと辿り着くもののようだ。

 現在、同店が販売を行なっている果物は、大きな分類では、いちご・さくらんぼ・桃・ぶどう・干し柿、この5種類となっている。

 やはり山梨県と言えば葡萄の産地として有名で、売上げの構成比としては 「約40%」 ほどを占めているのだそうだ。本場の美味しい果物を欲する方であれば、やはり検索キーワードにも 「葡萄 山梨」 と、県名の指定をしてくることが多いのだという。また全国的に見て、桃の生産量も日本一であり、こちらの需要も非常に多くなっている。

 しかし、葡萄などの販売を行なうにしても、その品種は様々であり、なかなか味の違いは伝わりにくい。品種によって特徴があるのは当然なのだが、それをどのように表現していくかは難しい問題だろう。「例えば、さくらんぼの 『佐藤錦』 のように名前が周知されているものは前面に出しますが、桃の品種など知られていないものは、深く掘り下げていません。」 価格や生産者以外の面でも伝えたいことは沢山あるのだが、まだ試行錯誤を繰り返している段階なのだそうだ。

 また、出荷できる期間の短いものが多いため、そのスケジュールも、「生産者が収穫時期を確定できるのが、出荷開始の2週間前くらいになります。お届け日の指定を受けていますので、ご注文の受付もだいたいこのぐらいに開始しています。」と、比較的慌しい。ちなみに、商品の出荷作業に関しては、全て生産者の方が行われる。

“果物狩り”のネット窓口業務も

果物狩りにはリピーターも多い

 同店が特徴的なのは、果物のネット販売のみではなく、果樹園に来園して行う “果物狩り” の窓口となっていることだろう。これはサイト開設当初から行っていたサービスで、「果物狩りは、販売と同じく大きな柱です。未来を背負う若者たちの果物消費は年々減少傾向にあります。若い彼らにいかに果物を食べてもらうかは、今後の果物作りにおいて非常に重要なポイントです。逸品やまなしでは、果物狩りが若者に果物に接してもらう最大の武器だと考えています。」 このような意図を持っているのだそうだ。現在、3件のメンバーの方と提携していて、入園者を紹介するごとに一定の紹介料を得る契約となっているという。

 果物狩りのサービスは、シーズンになればそこら中で見かける、決して珍しくないものだろう。しかし、こだわった果物を販売している同店が紹介しているだけに、当然グレードの高いものを食べられることが期待されている。「実は、果物狩りのイチゴもサクランボも、東京の高級果物の販売店さんに並ぶような、最高クラスのものを味わっていただいております。こんな例は他にはないと思いますので、当然のごとく強力なリピーターが育っています。」 農家の方の協力が無ければ開催できるものではないが、これは魅力的なサービスだと言えるだろう。

 もちろん、このレベルの果物を作ることができて、さらに果物狩りに開放してくれる生産者は限られる。このサービスを今後もさらに強化していくため、「最高品質の果物を作れる生産者を増やすことと、そのサポートには力を入れていきます。生産者の資質に関わってしまう話なので、このことも長年かけて実現していかないと、果物王国の名は、地に落ちると思っております。」 さらにサポート体制を整えていくようだ。

 果物の販売では、やはり季節によって売上げの変動が大きくなるものだが、これを均一化する方法は考えられているのだろうか。「変動は大きいですが、果物には旬があるのでそれは仕方ありません。逸品やまなしとしては、現状サイトはそのままに、別の柱となる事業の模索をしています。」 新たな展開を視野に入れている。

 しかし、今のサイトで他県の商材を扱ったり、果物以外のものを販売したりするという訳ではない。「総合的なことをすると、果物屋さんに近くなり、焦点がぼけます。当店が果物屋さんに挑戦するのは、勝てない試合を挑むことですから、基本的なコンセプトは変えないつもりです。」 ショップの最大の個性を失ってしまわないよう、方向性を慎重に見極めているようだ。

ブログを駆使したサイト構築

 同店では、サイトの構築にはシックス・アパート社のブログシステム 「MovableType」 を使用している。「果物の生育状況や、果物狩りの開催状況などは、ブログにすべき内容です。」 そんな理由から2004年に導入したそうだが、「メリットは管理が簡単なこと。デメリットはありませんが、フォーマットを作り上げるまでがCSSとにらめっこになるので、最初時間がかかります。」 その操作性など、満足して使用しているようだ。

 また同氏は、個人のブログ 「富士山写真日記」 の運営も行っている。こちらは、富士山の写真を文章と一緒に定期的にアップしているもので、山梨という地域性も伝わるいい雰囲気のコンテンツとなっている。「単純に目の前に富士山があり、ものを書くのもそう嫌いではないし、写真も嫌いではないから、『無いよりあった方がいいかな?』 というくらいのウェイトです。“富士山” キーワード検索により、このサイトの存在を知っていただき、もしも仕事につながればラッキーだなと。」 ただし、その結果には特に期待を寄せている訳ではないので、効果の測定もしていないそうだ。

 どうせブログを開始するのであれば、単純な店長の日記ではなく、このようなテーマを決めてあるだけで格段に読みやすくなるものだ。その手法は見習うべきかもしれない。

 今現在、サイト運営では 『現状をいかに打破して、飽きの来ないサイトを維持できるか?』 という点に苦心しているという。「例えば今年は、産直では珍しいぶどうのアイテムを増やすこと。果物狩りでは、フォトコンテストをしたり、子供に農園で絵を描いてもらったり、干し柿作りを新たに企画していることなどです。」 新しいサービスや企画を積極的に取り入れ、ユーザーの満足度を高めていこうとしている。

 さらにその後は、「単純に果物を食べていただくだけではなく、“果物を通じてよりお客様に豊かな時間を送っていただける”、そんなサイトにしていくために、色々な仕掛けを生産者共々考えていきたいと思っております。」 多くの生産者の方たちの助力を得て、地元の素晴らしい果物の良さを広めるためにも、まだまだ進化し続けていくようだ。

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