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2006年 6月19日

“ネット専業”へと転身した老舗酒屋 - 【ベルギービールJapan】三輪一記様

老舗酒屋がネット専業へと転身

【ベルギービールJapan】三輪一記様

 今回ご紹介するのは、日本では馴染みの薄い “ベルギービール” の専門店として、200種類以上のベルギービールと100種類以上のグラスなどの販売を行なっている 【ベルギービールJapan】 のWebマスター三輪一記様だ。ベルギーでは、日本の市場ではまず見かけることができないような様々なビールが生産されており、1996年のサイト開設以来、同氏はその魅力を伝え続けてきた。その結果として、不振に陥っていた酒類の業務用卸業から脱却し、ネット専業の小売店への転身を成功させることが出来たのだ。

【ベルギービールJapan】トップページ

 同サイトは、「株式会社 木屋」 によって運営されている。同社は、天保時代に郷宿を営み、後に味噌醤油の醸造業を開始したという老舗である。Webマスターの三輪氏は、同社の四代目にあたり、大学卒業後、3年間の酒造店勤務を経て同社へ入社した。当時の同社は、業務用卸を主とした外販を行っていたが、利益は非常に薄く、先細り感は否めなかった。

 そんな時、同氏はベルギービールと出会う。元々それほどアルコールに強い体質では無かったため、ベルギービールの多様な味わいが気に入ったのだろう。すぐに取り扱いを開始する。その後、ビールの本場として知られているドイツ訪問を経て、何度もベルギーに足を運ぶようになり、ますますビールの世界にのめりこんでいくことになる。

 ちょうどその頃、同社でホームページを開設することになった。これは1995年12月のことだった。翌年には独自ドメインを取得、当時注目されていた 「地ビール」 を中心とした品揃えで、ネット販売もスタートさせている。ベルギービールがメインとなるのはまだ後のことになるが、まだネットでのお酒の販売自体が珍しかったこともあり、個人サイトからのリンクも多く、新聞・雑誌に取り上げられる機会も多かった。

 しかし、当時の売上げはわずか 「5〜10万円程度」 にしか過ぎず、そんな状態が数年間も続いた。「売上も無い時期に、通常業務が終わったあと、夜中にサイトの更新などをしていた時は大変でしたね。」 実店舗の営業も厳しさを増してきており、しばらくはネットショップも開店休業の状態となってしまっていた。

 そんな状態でも、幾度かベルギーの醸造所への訪問は続けていて、サイト内の 「ベルギー訪問記」 といったコンテンツはそれなりのアクセスを集めていた。2001年頃には、ネット上の酒販店でも一千万円を売り上げる店舗が出現し始めたというニュースも耳に入ってきた。本業であるお酒の外販がますます下降気味だったこともあり、ネット販売を再開する決意をする。

 販売アイテムは、それまでもコツコツと更新を続けてきたベルギービールのみに絞り込み、決済方法なども全て見直してリニューアルオープンを行った。ただ単に品揃えを強化するだけではなく、商品の価値や物語を伝えるようにしたところ売上げも順調に伸び、「季節によってムラがありますが、年間では10,000件くらいの注文件数になっていると思います。」 このレベルにまで拡大してきている。2004年には一部の得意先を残し、利益の薄かった業務用卸から完全撤退、ネット専業店舗として完全に生まれ変わることができたのだ。

ベルギービールの魅力とは

入門編として人気の「お試しセット」

 同じヨーロッパのビールでも、ドイツとベルギーのものでは全く方向性が異なる。「ドイツには 『ビール純粋令』 という、バイエルン地方の君主であったウィルヘルム4世が1516年に施行した法令が現在でも守られており、“ビールの原料に、大麦とホップ、水以外のものを用いて醸造してはならない” という決まりがあるのです。」 こちらは日本人にも馴染み深いビールの味わいそのものと言える。しかし、その一方で、「お隣の小国ベルギーに行くとドイツの正反対で、自然発酵のビール、フルーツを使ったビール、修道院が造ったビールもあったりと、たった一千万人の国でそんな多種多様なビールが800種類もあるんです。」 同氏は、その奥深さを知れば知るほど魅力に取り付かれていったのだ。

 日本で飲まれているビールのほとんどが、下面発酵の 「ピルスナー」 という種類のものになる。しかし、ベルギーでは自然発酵の「ランビック」など、多種多様なビールが製造されており、色や味わいなどは変化に富み、中にはスパイスが入ったものやフルーツを原料とするものまである。冷涼な地域に国土が位置しているため、他のヨーロッパ諸国のようなブドウの栽培が難しく、ワイン文化が発達する変わりにビール文化が根付いたようだ。

 フルーツが原料のビールなど、日本ではまず見かけることが出来ないが、特に法律で規制されていたりすることもないのだそうだ。「ただし、日本で認められている副原料以外のものが入っていると 『発泡酒』 という表示になったりしてややこしいのです。しかも酒税はビールと同じで、他の種類と比べてもとても高いものとなっていますので、それよりはリキュール等で出したほうが良いと考えているのではないでしょうか。」 日本人には馴染みが薄いものであるが、さくらんぼやイチゴを原料としたビールはとても飲みやすく、女性からの人気も高いという。

 やはり同店では、ベルギーの代表的なビールが味わえる 『お試しベルギービールセット』 から入門する方が多い。5種類のビールがセットとなって送料込みで届けられるため、初心者を取り込むには最適の仕掛けだろう。また、単品では、「日本のビールが喉越し主体のものが多いことから、ベルギービールでも、やはり喉の渇きを癒せるものが人気です。中でも 『ヒューガルデン』 など、日本でも良く知られた銘柄が売れています。」 やはり何度でも飲みたくなる美味しさが認められているようだ。

失敗に終わった物流アウトソーシング

 現在、同店では、本店と楽天市場店、Yahoo!ショッピング店の3店舗を運営し、さらに、店長自らが綴るブログ 「ベルギービール生活」 なども公開している。ブログを開始した際には、「まず店長である私に親しみを持っていただこうという趣旨で始めました。」 という目的があったのだが、「実のところ、どういう方向に持って行ったらいいか、開設して2年近くになるのにまだわかりません(笑)」 店の宣伝もたまに交えたりするため、メルマガに近い効果はあるそうだが、それほど肩に力が入っていないゆったりとした雰囲気が伝わってくる。

 さらに、サイト内の 「新着情報」 と 「お客様の声」 のページは Movable Type を利用してブログ化されている。RSSでの配信にも対応しており、新たなシステムにも対応を始めている。

 また、同店では、2004年にネット専業へと生まれ変わった際に、物流部門をアウトソーシングしていた。思い切った試みだったのだが、配送に関するクレームが頻発してしまい、散々な結果に終わってしまった。やはり、瓶詰めされたビールやビアグラスなどのガラス製品が多いために、梱包も簡単なことではないのだ。そこで、「今年から自社配送に戻し、梱包スタッフも増員、自社で梱包のノウハウを積んで行っております。緩衝材、箱等にも工夫をし、今ではそれほどトラブルはありません。」 こんな回り道も経験してきた。

 あまりの薄利のため、業務用卸から撤退してネット専業となった同店であるが、逆に今になって “業務用で使いたい” という引き合いもかなりの数が寄せられている。「地方の飲食店様で 『ベルギービールを取り扱いたい』 とか、『たくさんの種類の銘柄をおいてみたい』 という、たくさんの業務用のお問い合わせをいただいております(でも、もちろん一般と同じ価格です)。」 魅力的な品揃えに特化させることで、特別な営業活動などをすることなく、利益を確保できるのようになったのだ。方針転換した価値はあったと言うべきだろう。

ベルギーからの直輸入も開始

アクセスも多い「ベルギー訪問記」

 現在、同サイトではPCC広告に出稿しているぐらいで、あまり積極的に広告宣伝を行ってはいない。それも、「幸いいろいろなところに取り上げていただいたり、検索でも各商品が上位におりますので(今のところはですが)、これといった広告はやっておりません。」 これまでの積み重ねがあればこそのことだろう。

 また、他サイトでは見当たらないほど専門的で充実したコンテンツを公開しているだけに、以前から何度も盗用の被害にあってきた。今でもこうした事態は収まった訳ではないというが、「以前はものすごく気にしたり落ち込んだりしていましたが、最近ではあまりひどいものでなければ、気にしないことにしました。“真似しても売れないことがわかっているから” というのもあります。」 このカテゴリの先駆者として築いてきたアドバンテージは簡単に崩れるものではないのだ。

 一見、順風満帆に見える同店であるが、「商売の根幹に関わることですが、ベルギービールだけでなく、お酒の商売はとても薄利なのです。“売れば売るほど儲からない”というスパイラルに陥りがちです。」 こんな危うさは常に感じている。そこでより安定した利幅を確保するため、「これまでは商社経由の仕入れのみでしたが、昨年から直接貿易を開始するべく、2度ベルギーに渡り、4社の醸造所と取引できることになりました。書類や食品検査など関門は多かったのですが、ようやく最初の船が7月にやってきます。」 ビールの直輸入だけではなく、今後はベルギー関連の他の商材の発掘にも努めていく。

 また、方向性の一つとして、“ベルギービール専門店” の枠を広げて、世界中のビールを手広く扱うという展開も考えられるだろう。「『ドイツビールJapan』 とか簡単にできそうなんですが、それをやった場合、私の知識やこだわりがベルギービールと同等レベルに達しないうちは、ベルギービールJapanの信用にも関わるかもしれません。そう思って、今のところはやっておりません。」 将来的な発展形としてはあり得るのかもしれないが、今のところは “ベルギービールの魅力” を突き詰めていくことに集中していくようだ。

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